【陳情のやり方:陳情の手紙の手本(約4500字(最大)版)】

【陳情のやり方:陳情の手紙の手本(約4500字(最大)版)】

(陳情の手紙、手本はここから始まりです。前述の通り問題点についてほぼ全て記載していますのでかなり長くなっています。皆さまが実際に書く際には問題点を取捨選択するのが適切です)

前略 ○○党 衆議院議員 ○○××様

(「衆議院議員」のところは送る相手の先生が参議院議員であれば「参議院議員」と書いて下さい)


突然、この様な手紙を送る無礼をお許し下さい。

私は○○県××市に在住する○○××と申します。

この度は、現在開催中である第198回国会にて文化庁から提出される予定の「静止画ダウンロード違法化案(著作権法改正案)」に強く反対している意を伝えたいので、この度一筆取らせていただきました。

 

本法案はネットにアップロードされている、著作権侵害をしている画像やテキスト、プログラムなど全コンテンツの、ダウンロード及びスクリーンショット(画面撮影)を違法化するというもので、文化庁文化審議会著作権分科法制・基本問題小委員会が策定・立法化しているものです。

これは「漫画村」のような漫画の海賊版サイトを取り締まろうという意図で立案されましたが、実際には漫画海賊版サイトには(既に対策が施されており)まったく効果がなく、逆に市民生活への影響などマイナス面が極めて大きい法案となっています。

 被害が大きい漫画の海賊サイト版対策が必要であることは誰も異論がない事であると思いますが、この改正案が「漫画を海賊版ダウンロードサイトの被害から守る」という効果がほぼ全くない事を漫画家側は熟知しており、日本マンガ学会も団体を挙げて一貫して反対して声明を出しています。

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日本漫画学会『ダウンロード違法化の対象範囲拡大に対する反対声明』
2019年1月23日
https://www.jsscc.net/info/130533

「ダウンロード違法化の対象範囲を安易に著作物全体へと拡大することに反対します。

文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の「中間まとめ」において、「著作物の種類・分野による限定を行うことなく広くダウンロード違法化の対象範囲に含めていくべきとの方向性については、概ね共通認識が得られた」とされている。しかしここでは、以下のような問題が看過されている。

1、合法とは言い切れない二次創作のダウンロードまで禁止することで、海賊版研究だけでなく、二次創作研究をも明確に阻害することになる。

2、現在のインターネット環境においては、研究あるいは新たな創作のために、記事・図版・文章の一部などを合法・違法を問わずメモとしてダウンロードし、クリッピングすることは日常的に行われており、こうした行為を「違法」とすることは、むしろ広範囲での研究・創作の萎縮を招く懸念が非常に大きい。

3、動画や音楽の違法アップロードと違い、静止画や文章が「違法」アップロードであるかどうかは判断が難しい。たとえば短文のSNS等で正確な出所が示されていない記事はすべて「違法」と判断され、ユーザーがダウンロードを控える可能性がある。

4、ダウンロードを違法化しても、「漫画村」のようなストリーミング方式の海賊版はまったく取り締まることができない。現在の動画や音楽のダウンロード違法化・刑事罰化のあと、逮捕者は出ておらず、もっぱら法律による「抑止力」のみが期待されている状態である。このような現状を鑑みると、今回の「中間まとめ」にあるように、静止画等のダウンロードを違法化することは、悪意ある侵犯者に対してはまったく効果がなく、逆に一般ユーザーの萎縮を招き、研究・創作を著しく阻害する最悪の結果となることが予想される。

これらの点が十分に検討されているとはいいがたいのは、中間まとめが、著作物の私的使用を一方的な便益の受容・消費活動と限定してとらえているためであり、著作物の享受や消費行為が、新たな著作物を創造する〈生産行為〉でもありうるという点が考慮されていない。

とくに日本のマンガ文化は、こうした〈生産行為〉を基礎とすることで、世界的な発展を遂げて来た。著作権の保護されるべき最終的な目的が「文化の発展」にある以上、この著作物の受容・消費過程における生産的・発展的側面が失われるようなことがあってはならない。よって、ダウンロード違法化の対象範囲の拡大それ自体に反対する。」

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(※二次創作…既存の漫画やアニメなどを基にして、ファンが描いた絵や作品のこと。TPP交渉に際し、安倍総理が保護を訴えたほど広く一般的に行われており、日本のクリエイター環境を支えている。しかし一方で著作権侵害をしている可能性が指摘されている。)

風と木の詩』『地球へ…』などの作品で知られる漫画家の竹宮惠子先生は、違法ダウンロードの対象拡大について、漫画だけでなく、二次創作などの研究についても萎縮を招くと懸念を示しています。
さらに、二次創作自体の萎縮につながる可能性に触れて、海賊版サイトから被害を受けている漫画家は「二次創作コミュニティとはうまく共存できている」と主張しています。

また『ラブひな』『魔法先生ネギま!』で知られる漫画家の赤松健先生は、違法ダウンロードの対象が静止画などへ拡大すると、「私も自分のHDDの中にたくさんのイラスト画像を保存している。特にスポイトツールを使い、先人の作った色合いを参考にすることが多い。これがダメになると、日本のカラーCGイラスト界、商業漫画家やイラストレーターは壊滅する」と、、漫画家の創作活動にも影響が出ると警鐘を鳴らしています。

出典元:『「意味のない法改正」「イラスト界が壊滅する」 違法ダウンロード対象拡大で漫画家らが“反対集会”』
ITmedia NEWS 2019年02月08日


また、こんな問題もあります。

 

たとえば国会議員の先生が「僕はこんないい仕事をしました!」と新聞の切り抜きを撮影したものをホームページに載せたり、ツイッターにアップロードしているのはよくあることですが、この法律が施行された場合は(違法化の対象を確定的故意に限定しておらず取り締まりの対象が海賊版サイトに限定されないので)、有権者がそれをスマホやパソコンに保存した場合、保存した人はそれだけで犯罪者になってしまいます著作権法では一定の要件を満たせば引用として他者の著作物を自由に使えますが、現在でもその要件を満たしていない写真などが議員さんのホームページやFacebookには多々見受けられ、有権者がそれを保存するだけで(それが記念に保存しておく目的でも(!))犯罪行為になってしまいます)。

 

・盗用論文や剽窃論文の検証が不可能になります。
2014年に起きたSTAP細胞事件では、事件の主犯である小保方晴子が書いた論文の冒頭20Pが、米国の他の研究機関の論文のコピーでした。
この時点で小保方の論文は著作権違反物となるので、第三者である他の研究者や報道機関が、検証のためにこの論文をダウンロードすることが違法になってしまいます。
つまりダウンロードが違法化されると、このような盗用論文や剽窃論文の検証、フェイクニュースなどの検証が不可能になるのです。


・裁判の証拠集めに支障が出ます。
反社会行為に対する証拠集めや告訴準備のために、加害者が掲示している画像やテキストを被害者が証拠保全のためにダウンロードしたとします。
しかしその画像やテキストが著作権違反物だったら、被害者は違法なダウンロードをしたということで、集めた証拠も裁判などで証拠採用されなくなる恐れがあります。また違法なダウンロードをしたということで、相手からの報復の反訴を受ける可能性もでてきます。 


・誰も彼もが違法ダウンロード犯になる恐れがあります。
恐らくネットを使用している人の中で、アップロードされた静止画やテキストをダウンロードしたことがないという人は、まずいないでしょう。
例えば、ブログやツイッター、画像掲示板などを巡回して、これはと思った新聞記事やアイドル画像、面白記事や面白画像。誰かが描いたイラストや風景写真。絶版になった昔の雑誌や本の記事。出自のわからない論文や小説など…etc。

そんなものをなんとなく自分のパソコンやスマホに保存している人は多いはずです。
恐らくネットを使っている殆どの国民は、誰もが過去に一度はやっているはずです。
それらを画像や写真の権利者がアップロードしたものかどうか、いちいち確認してから保存している人などまずいないでしょう。
そうして保存した画像の中には、権利者に無断でアップロードされたものも混ざっているでしょう。
また著作権侵害が行われているのかどうかを、第三者が検証するために、当該著作物をダウンロードするのも違法化されます。

すなわち静止画・テキストなどの全著作物ダウンロード違法化する、「静止画ダウンロード違法化案(著作権法改正案)」とは、日本国民全員を潜在的犯罪者にする法規制なのです。


憲法で保障された『通信の秘密』が侵害されます。
文化庁文化審議会著作権分科法制・基本問題小委員会の報告書では、ダウンロード違法化の効果をより高めるために「アクセス警告方式」の導入を主張しています。
「アクセス警告方式」とは、ユーザーが海賊版サイトにアクセスしたら、警告を発するというものですが、これにはユーザーのアクセス(通信)を傍受し、監視する必要が出てきます。
しかし憲法21条にはこう書いています。


日本国憲法第21条 第2項 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

文化庁は漫画海賊版対策という名目で、憲法違反の政策・立法化までしようとしているのです。

出典元:
文化庁文化審議会著作権分科法制・基本問題小委員会報告書P82
http://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/__icsFiles/afieldfile/2019/02/05/a1413423_02.pdf

 

このような乱暴な立法に対して知的財産・著作権法の専門家団体である、「一般財団法人 情報法制研究所(JILIS)』は『ダウンロード違法化の全著作物拡大に対する懸念表明と提言』を発表しました。

「乱暴な立法方針から転換すべき。静止画ダウンロード違法化案(著作権法改正案)は、民事・刑事を問わず、「原作のまま」かつ「著作権者の利益が不当に害される場合」に限ることを明記すべき」

と強い懸念を示しています。
(注:”「原作のまま」かつ「著作権者の利益が不当に害される場合」に限る”という構成要件は、TPP条約で成立した著作権非親告罪化と同じ要件です。)

出典:JILIS 一般財団法人 情報法制研究所「ダウンロード違法化の全著作物拡大に対する懸念表明と提言」
https://www.jilis.org/proposal/data/2019-02-08.pdf

 

「ダウンロード違法化の全著作物拡大に対する懸念表明と提言」については、有用な資料であると考え、この手紙に同封いたしました。

 (著者注:上記「ダウンロード違法化の全著作物拡大に対する懸念表明と提言」を陳情の手紙に同封することをおすすめします。)

本法案は昨年12月に文化庁から突然出て来たものでありながら、ほとんど議論もなく強引に立法の場に提出されようとしています。先生にその旨をお知らせするとともに、強く反対する旨を伝えたく、筆を執った次第です。どうか、このような法案をそのまま通すことは避け、著作権者の利益が不当に害される事を防ぐための法律に正していただきますよう、謹んで申し上げます。

 

以上、僭越ながら私の意見を述べさせていただきました。

お忙しいにも関わらず、私の拙い意見を読んでいただき、誠にありがとうございました。

乱筆乱文については、ご容赦願います。

ではこの辺で失礼させていただきます。

草々

平成31年〇月〇日

氏名:(ここに自分の本名を書きます)

住所:(ここに自分の住所を書きます)

TEL:(ここに自分の電話番号を書きます。携帯の番号で構いません)

E-mail:(ここに自分のメールアドレスを書きます)

 (陳情の手紙、手本はここまでです)